いいもの見せてあげる と祖母はいたずらっ子がするような笑みを浮かべた。自分の娘の顔すら忘れている祖母だが、その表情はかつて私に向けられたものと同じだった。 祖母はよくそう言って、安野光雅のきれいな絵が描かれた絵本や、水彩のクレヨンや旅先で見…
土が湿った匂いの入り混じった涼しい風が吹いている。あんなにもいた蝉の声の代わりになんの虫かわからない虫が静かに鳴いている。もう秋が来る。何もできてない夏が終わる。 無力だ。 そう常々感じる。周りはどんどん走り抜けているのに、取り残されている…
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