快と不快

友人がみてきた展示の話をしてくれた。 まず、快と不快について。人間は快よりも不快に敏感らしい。お皿が割れる音、救急車のサイレン、都市ガスの臭い、緊急速報の通知音、アプリのアイコンの右上に出る赤い通知の数を示すもの。気づかないうちに我々の周り…

水の中で

他者との関わりの中で、ふと悲しくなる時がある。随分前に、わたしが友人と2人で、別の友人の話をしていた時、その友人が最後に、ま、本人がいいならいいんじゃない、と締めくくった。その時すごく、ぞっとして、その友人のことが怖くなった感覚が今でも忘れ…

秘密兵器の末っ子

我が家には秘密兵器と呼ばれる末の弟がいる。母方の祖父に似て、自由人で昔から好きなことをとことんやり込むような弟だった。 物持ちの良すぎる叔母から貰ったドラえもんの漫画は弟によって、繰り返し読み返され全巻ぼろぼろであった。何度も開いたせいかペ…

目を澄ませて

ノートに書く鉛筆の擦れる音、電車の音、車の音などの日常の音。ミッド打ちの音。フォークギターのぽろんという音。静かな中にそれらがあるだけで、音楽などなくても十分音楽だった。ケイコが聴こえないから、より一層、私たちは注意深くなる。 風景も十分に…

クリスマスの贈りもの

服を買うという行為が商品を購入すること、でしかなかった。選んで、着てみて、自分と対話し、財布と対話し、決める、といった流れで、それはそれで楽しい。誰かの意見に流されるでなく、自分の感性に忠実に買い物ができている気がするから。 基本的に店員さ…

対話

一卵性双生児であっても性格が異なるのは何故なのか、何が人間性をつくるのか、という話を聞いたことがあるだろうか。 人間性を形成する半分は遺伝子、もう半分は環境だとされている。外界とのやり取りを経ることで自己を形成している。 建築も生物であるよ…

記憶に残る手段

記憶に残るもの、感動するもの。 ある芸人さんは脚本を書く時、他の芸人さんのコントを見ながら次の言葉を予想し、その先の予想し得ない末端の言葉を見つけるらしい。 坂元裕二さんの作品も確かにそうで、すぐ裏切る。対義語かと思いきや少し違う。 オルジャ…

あなろぐとデジタル

澄んだ空気に木々が黄や赤に色めき出し、外国人観光客が順調に増えていら京都でわたしは日々パソコン画面と睨めっこをしている。 ポートフォリオ、研究データの整理に追われ、引きこもり状態にある。 そんな中珈琲サーバーが割れた。わたしは買い替えを言い…

風吹く日

最近めっきり涼しくなった。鈴虫が鳴く。タオルケットから掛け布団になった。ご飯は焼き魚が食べたくなる。そんな秋の夜。 別れがあるし、ひとりで考える時間が長くなるし、秋風は身体の中も通り抜けるようで、それは心に穴が空いているような感じがして、勝…

現代の茶室空間

瀬戸内国際芸術祭期間中に、豊島・直島に訪れた。 島々に点在するアートをみた。そして1日のうちにひとつずつ、からだの心底からぞくっとする作品に出会えた。 ・豊島美術館 ・地中美術館のモネの睡蓮 ・家プロジェクトのジェームズ・タレル作品 それらはど…

蚕を聞いたことがあるだろうか。 歴史で学ぶ、養蚕業の中で出てくる美しい白い繭をつくり出し、そこから生糸にして絹(シルク)をつくりだす昆虫である。 その蚕が、人間の遺伝子操作により、自然界には存在しない生き物であると知ったのはつい最近である。…

カツとコロッケ

ドライブ・マイカー ひとを信じるとは、どういうことか、を考えさせられた。ひとの性格は両儀的である。一見対立しているように見えるA面・B面は同時に存在し得る。愛するひとのA面を真実だと思いこんでいたひとが、そのB面を見てしまったとき、そのひとはそ…

マニキュア

いいもの見せてあげる と祖母はいたずらっ子がするような笑みを浮かべた。自分の娘の顔すら忘れている祖母だが、その表情はかつて私に向けられたものと同じだった。 祖母はよくそう言って、安野光雅のきれいな絵が描かれた絵本や、水彩のクレヨンや旅先で見…

土が湿った匂いの入り混じった涼しい風が吹いている。あんなにもいた蝉の声の代わりになんの虫かわからない虫が静かに鳴いている。もう秋が来る。何もできてない夏が終わる。 無力だ。 そう常々感じる。周りはどんどん走り抜けているのに、取り残されている…

低気圧

昨日は一日中大雨だった。 明日は七夕の日だ、と気がつくと天気を検索しながら、ちょっとした賭けをする。晴れだと少し嬉しく、雨だとやっぱりかーとなる。 なぜこんなに雨が多い日に七夕なんて設定したのだろう。七夕の日に晴れてることの方が稀だ。毎年、…

あたたかいもの

明日会う友達に借りてた本のことをふと思い出して、久しぶりに物語の文庫本を読んだ。 細かいたべもののの描写がどれも瑞々しく、献立も、スタミナつけろと何日も続く餃子や、今年は勝負の年だと新学期の朝のカツ丼は、一見強引だけれど食べてくれる人への思…

ことのは

はじめまして。 昔から物語や詩を読んだり、文章を書いたりすることが好きで、得意なのだと思っていました。しかし、しだいに文章を読む機会が減り、周囲の人に言葉が変と言われ、これはいかんと思い、言葉をもっと大切にしようとブログを始めました。 今回…